Dreaming Sunday

「ねぇ、身体洗ってあげる」
湯気のけぶる温かい浴室で、身体を痛めさせてしまったお詫びにと提案したこと。先に湯船に浸かって身体を温めていたギルバートがきょとんとこちらを見る。タオルを手にして手招きすると、途端に頬を染めて首を振った。
「い、いい。自分で洗う」
「えー、たまにはいいでしょ。オレにさせてよ」
「駄目だ!オズにそんなことをさせるなんて」
ばしゃばしゃとお湯が跳ねる勢いでギルバートは首を振る。嫌だと言われればもっとしたくなるのがいじめっ子の心理なのに、ギルバートは本当にわかっていない。そんな態度はオズを煽るだけだというのに。
「オレがしたいんだよ?それともなにかな、オレに触られたら反応しちゃう?」
「そんなわけあるかっ!」
「そう?じゃあいいよね?」
ギルバートを湯船から引きあげて椅子に座らせる。わくわくと背後に立つと、泡立てたタオルを肌に滑らせた。ふわふわのタオルに細かい泡。肌触りは間違いなくいいはずだ。
背中を擦って、それから腕へ。引きしまった筋肉を手で感じて少し妬ましくなる。オズの身体は男というよりまだ少年に近く、こんなふうになるまでにはあと何年かかるだろう。すぐだ、すぐ、とオズは自分に言い聞かせる。そしてギルバートよりも身長が高くなったらたくさん抱きしめてやるのだ。抱きあげることもできるようになるといい。そのためにもお風呂からあがったらミルクを飲もう、と考えながらギルバートの肌にタオルを滑らせる。
ボディソープのいい香りが漂うというのに、ギルバートの身体は完全に緊張しているのを感じ、オズはくすりと笑った。少し悪戯してやろうと、何気ないふりを装ってギルバートの胸に手を伸ばす。途端にギルバートの肩がびくりと跳ねた。
「んっ……!」
胸の尖りに触れ、そっと擦っただけ。零れた声に、それだけで身体に熱がざわめくのを感じてオズのほうが戸惑った。あれだけ節操無く貪っておきながら、身体のほうはまだ足りないらしい。目の前のギルバートを見ているだけで反応してしまいそうになるくらいには、オズの身体は若く、そして成長途上とはいえ確かに男だということだ。
「気持ちいい?ギル」
しかしすぐに食いついてしまうには少し惜しい。オズは気付かなかったふりをしてギルバートの腕から手のほうへとタオルを戻した。
ギルバートがオズのほうを振り向き、責めるような色をしている黄金色と目があった。にこりと笑ってやる。言いたいことなんてわかっている、「変な悪戯をするな」だろう。でもこうなるのはわかっていたでしょう?胸の中で都合のいい反論。
ギルバートだって心底嫌だと思っているはずがない。それが思いあがりでないことは彼の仕草でわかってしまう。
「ここも洗ってあげるね」
「い、いい!自分で洗え、ひゃ……」
手の先まで洗いあげて、オズはタオルを持った手をギルバートの胸へ持ち上げる。後ろから抱きつくようにしてタオルを胸に擦りつける。敏感な部分に触らないように注意しながら広い胸板を泡で埋めていった。触れた胸からギルバートの鼓動が早くなっているのが伝わってくる。
ちょうど目の前にあった耳をそっと食む。軽く噛んで舐める、今はカフスがないぶんそのまま触れて快適だ。
「っ……、オズ、やめ……」
「なにが?洗ってあげてるだけだよ?」
「どこが、ひっ……!」
「へぇ、ギルは洗われてるだけに思えないんだ。ここをこうされることとか期待しちゃってたんだね?」
今までわざと避けていたギルバートの胸の頂にタオルを擦りつける。玄関先で交わした一度の行為でそこは敏感になっているはずだ。思った通り、一度触れただけでギルバートの甘い声が零れた。
「膨れてきたね。もっと綺麗にしてあげる」
「嫌だ、オズ……!」
タオル越しでの感触に物足りなくなって、タオルをどかすとオズは泡を手に取った。直接手でギルバートの胸に泡を擦りつける。しっとりと吸いつくような感触の肌、そしてぷくんと持ちあがったそこに指を這わせて。
摘まみあげて軽く擦るとギルバートの黒髪が揺れた。緩く頭を振るけれど、ギルバートの身体は確かにこの行為を悦んでいる。固くしこるそこをしつこく弄っていると、声があがった。
「オズっ……、こんな、いやだ……」
「ギルは『嫌』ばっかりだね。ほんとにやなの?じゃあこれはなに?」
「っ……!触るな馬鹿!」
下のほうへ手を伸ばし、緩く頭をもたげはじめていたそれに触れるとギルバートが悲鳴に近い声をあげる。胸だけでこんなにしてしまうとは、感じやすくなったものだ。自分の調教の成果に満足を覚える。
抱きついていたところに自分の腰を押し付け、ギルバートに自分の状態を知らしめる。わかってしまうはずだ、それが同じ形になっていること。
「ね、ギル。オレもまだ足りないよ?」
耳元で囁く。思い知ればいい、どんなにギルバートを欲しいと思っているか。いくら繋がっても足りないくらい。彼の全てが欲しくてたまらない。
「……オズ、」
呟かれたギルバートの声の響きに、オズの腰の奥が重く疼いた。それは確かにねだる色を帯びていて。今すぐ食べてしまいたいけれど、少しだけ我慢を自分に課した。玄関では触れなかった部分に触れたい。その欲求を叶えるために。
きゅ、とコックを捻ってお湯を出す。ギルバートにシャワーをかけ、泡を洗い流した。
「……ん、」
ギルバートが心地良さそうな声を出す。恥ずかしがる素振りがないということは、感じているのではなく単にお湯の温かさが気持ちよかったのだろう。今度は違う意味で声を出させてやる、とオズはギルバートの前に回り込んだ。膝をついて、胸に顔をうずめる。焦らす余裕もなく胸に食いつくと、ギルバートの肩がびくりと震えた。
「オズっ……」
「ん、いいにおい」
洗いたてのギルバートは石鹸のいい香り。においを吸い込み、ぺろりと舐めて味わう。ちゅぷ、と音を立てて胸の頂を食べながら手を伸ばした。下で存在を主張しているギルバート自身へと。タオルの上から軽く擦る。切なげなギルバートの声がたまらない。
「ふっ……」
声がくぐもったのを不思議に思って見上げると、ギルバートが指を噛んでいる。ああ、そうか、と思い当たった。声が響くのが恥ずかしいのだろう。普段から自分の声を恥ずかしがるギルバートだから。
でもそれは許さない。オズは手を伸ばすとギルバートの手を外させた。ギルバートは首を振って拒絶するけれど、許してなんてやらない。
「駄目。痕が残るでしょ」
「っ……、でも……」
「いいじゃない、オレしか聞いてないよ。言ったでしょ、いやらしいギルが好きだって。だからもっといやらしいところ、見せてよ」
言いながらボディソープのボトルに手を伸ばし、一度押して液体を手に取った。泡立ててギルバートのタオルをはぎ取る。その下のギルバートの自身がどうなっているかを目にして思わずごくりと唾を飲み込むことになった。完全に頭をもたげたものがほしくてならない。かわいくてたまらないし、ここを刺激してギルバートが追い詰められていく様子を早く見たい。泡を擦りつけ、そこを洗ってやる。
「あっ、オズっ……!んぁっ」
「ふふ、なんかやらしいお店みたいだね」
目で「そんなところに行ったことがあるのか」と訊かれたから、ないよ、と答えてやる。でも男ならその存在くらい知っていても不思議ではないだろう。
マッサージするように泡で撫でてやる。すっかり硬く反応したそれが愛しくて仕方がない。もっとかわいがってやりたい、でも同じくらい焦らして泣かせたい。その天秤加減は完全にそのときのオズの気分だったが、今はどちらかというとかわいがりたい欲求のほうが強かった。
根元のほうも洗ってやり、袋や後ろまで泡をつける。くしゃりと髪を握られ、ギルバートが前屈みになったのを知る。どれだけギルバートが追い詰められているのかも。
泡を入れないように後ろは撫でるだけにとどめておいたけれど、ギルバートの吐息が確かに先をねだっているのを感じる。すぐにでも指を突き立てたいけれど少し我慢、とただ洗うだけを繰り返した。そのかわりに前を擦ってかわいがってやる。びくんと震えはじめたのを感じて、オズは少しだけ笑みを浮かべるとシャワーに手を伸ばした。ざぁ、とお湯をかけて後ろまで邪魔な泡をすっかり洗い流す。そうしてからぱくりとギルバートのものを口に含んだ。
待てなかったのだ。口でかわいがりたくて仕方がなかった。口いっぱいにギルバートの自身を飲み込み、舌を這わす。ギルバートの高い声が上がるのに否応なく煽られた。
誘われるようについ後ろにも指が伸びる。一度の情交で柔らかくなったそこへ指を埋め込み、後ろからも刺激してやる。一番感じるところはわざと外して。
「んっ……、はぁっ、オズっ、そんな、ふうに……っ」
ギルバートの声がじれったそうな色を帯びて、オズのいじめっ子心を刺激する。そんな声を出されてはもっといじめたくなってしまうのに、本当にわかっていない。いや、それとも本当はいじめられたいのかもしれない。痛くしても、時にはそれにすら感じてしまうギルバートだから。
先のほうを吸いながら後ろに入れた指を蠢かす。ギリギリのところで弱い刺激に変えることを繰り返していると、とうとうギルバートのほうが音をあげた。
「オズっ……!もう、……もう」
「なに?もう、なんだって?」
視線を上げると、ひくりと彼の喉が上下したのが目に入る。そこに噛みついて食べてしまいたい。荒く息をつきながらも肝心なことを口にできずにいるギルバートにそっと笑ってやった。
ここで素直に言葉にすれば、してやらないこともないのに、と勝手なことを考える。でも直接的なことをなかなか口にできないのがギルバートだ。
「もしかしてもう達きたいの?いいけど、ギルばっかりはずるいよね?」
笑みを浮かべて告げると、ギルバートはとろりと蕩けた瞳でオズを見下ろす。その瞳には明らかにお預けを食らった落胆が滲んでいて、それもまたオズを煽る結果にしかならなかった。
「オレにもして。ちゃんとできたら達かせてあげる」


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2011.02.20.





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