Dreaming Sunday




「ふ……っ、」
重ね合わせた唇の端から時々吐息と声が零れた。
口を開けさせて舌を浸入させても青年は全く応えてこない。オズがいくら催促しても、舌は奥で怯えたままだ。
焦れたオズは青年の後頭部を掴んでぐっと引き寄せる。そうすることでキスはより深くなり、奥の青年の舌をようやく捕まえることができた。柔らかな舌を絡めて味わうと、オズの下になっている青年の身体が震えるのが伝わった。
淫魔と自分で言っていたが、この反応はどうだろう。手練手管に長けた淫魔のイメージとは程遠い。
口内に引き込んで軽く歯を立てた途端に青年の身体が跳ねた。この様子ではもしかしたら。
「お前、ちゃんと食事、できたことあるの?」
頭に浮かんだ純粋な疑問。
口に出してから気付く。これではまるで妬いているようだ。
「いや……いつもうまくいかなくて……」
その答えにほっとしている自分にオズは気付いた。あんな質問をしたり答えに安心したり……これではまるで。
そんなことを頭の隅に片置きながらじゃあ今までどうしていたのかと尋ねれば、仲間たちに精気を分けてもらっていたのだという。
それはそれでまたおかしな気持ちになりそうだったけれど、そんなことを考えても仕方ない。オズは自分の気分を切り替えるかのように尋ねた。
「お前、名前は?名前くらいあるんだろ。オレはオズ」
「へ?あ、えーと……ギルバート……」
「ギルバートね。じゃあギルって呼ぶか」
目を瞬かせてから名前を告げた青年に、オズはふっと笑ってその場で愛称をつけた。自分だけの呼び方をつけたことで、目の前のただ綺麗だった青年は、そのとき『ギル』という一つの存在になる。それが嬉しくてオズは再びギルバートに口づけた。
あまい唇に自分のものを重ね、もっと深く味わうために舌を出すと、今度は意外なほどあっさりと彼の口内に招き入れられた。舌を絡めようとしても、今度は逃げない。積極的に応えてくることはないものの、オズのほうに舌を差し出してくる。反応の違いにオズは目を細めた。
この適応力の高さはやはり淫魔たる所以か。オズがキスをしたたった一回で味を覚えてこんなふうになったのだとしたら。
「かわいいな、ギルは」
一旦顔を離してギルバートに投げ掛ける。とろりと蕩けた眼をしていたギルバートはそれはとても扇情的だった。
誘われるようにコートから見える首筋に唇を落とす。日の光を知らない白い肌に舌を這わせ、時々軽く歯をたてる。
手を伸ばしてコートを開くと、ギルバートが上半身につけているのが白いシャツ一枚であることが知れる。胸に手を這わすとギルバートが身じろいだ。
「あのっ……さっきからなにを……」
どうやらまだ自分が抱かれる立場になるということを理解していないらしい。淫魔というからには一応抱く立場が普通なのだろうし。でもサキュバスという女性の淫魔もいることだし、逆になったからといって食事ができないということはないだろう、とオズは自分に都合よく考えた。
「お前、ほんとにインキュバス?こんな状況ですることなんて他にないだろ。オレがお前をいただくの」
「いただ……!?なっ、それはっ、ちょっと待っ……」
「ダメだよ、だってギルはいいって言った。大丈夫、ちゃんとオレの精気をたくさんあげるから。なんの問題もないだろ?」
「だからといって……!」
じたばたと暴れる身体をオズは造作なく押さえつける。この体勢ではオズのほうがかなり優位。いくらギルバートがオズよりたっぷり20センチ背が高くても、オズをはねのけることはできなかった。
それでももがくギルバートに、オズは少し面倒になる。ちゃんと食事はさせてやるからおとなしくしていればいいものを。
手っ取り早く黙らせようと、オズは手を伸ばすとギルバートの股間を掴んだ。むにっとした感触のものを捕まえて、柔く揉む。弱いところに触れられて、ギルバートの抵抗が途端に止んだ。
「ひっ……、やめ……」
「約束は破らないよ?ちゃんとお腹いっぱいにしてあげる。だからおとなしくしてよ」
柔らかいそれを、はっきりと刺激する目的で揉む。なにか小さな生き物のような柔らかさをもっていたそこは、オズの手つきに反応して芯を持ち始めた。
勝手なイメージかもしれないが、淫魔というなら感度はいいだろう。たとえオズのほうに実戦経験がなくとも気持ちよくしてやれるはずだ。硬くなって脈打ち始めたそこに、オズは眼を細める。
「はっ……、も、いやだ……」
「嫌なの?気持ちいいのは好きなんじゃない?」
「ちが……」
ギルバートはゆるく首を振る。顔を見られるのが嫌なのか、腕で顔を隠してしまっている。感じるかわいい表情が見たいのに、とオズはそれに少しの苛立ちを覚えた。
「なにが違うの?ここはこんなに硬くなってるのに」
「言うなっ……、っあ……!」
服の上から強く握り込む。しかし服ごしでの刺激では、ギルバートが達するには至らなかった。もう吐き出したいのだろう、オズの手と服の中でギルバートのものはびくびくと脈打つ。
かわいいけれど、このままイかせてしまうのは勿体ないな、とオズは考える。なにか代償を……と考えて、一番最初に頭に浮かんだこと。あっさりとそれに決めて、オズはギルバートの黒いパンツに手をかけた。ギルバートが期待からか息を飲むのが伝わる。
わざと見せつけるようにボタンを外し、ファスナーを下ろす。光源がかなり小さいせいでよく見えないけれど、どうやら下着も黒いようだ。焦らすように下着の上からギルバート自身を撫でてやると、我慢できないと訴えるように腰が揺れた。
「あっ……、はぁっ……」
見るとギルバートの顔は真っ赤に染まっている。オズが下肢の衣服に手をかける様子から目を離せずにいるようだ。 その眼から読み取れるのは、自分のものを視界に晒す恥ずかしさと、同時に快感を求めて期待する気持ち。相反する気持ちに躊躇うギルバートはとても艶っぽかった。
自分のほうも確実に昂りはじめるのを感じながら、オズは意を決してギルバートのパンツと下着を引き下ろした。途端に反り返ったギルバート自身が勢いよく飛び出し、オズの視界に入ってくる。
「や……」
小さな声と荒い息が零れた。ギルバートは赤い顔を背けてしまう。反応しきった自身を晒すのは、そりゃあ恥ずかしいに違いない。
だけどギルバートがいくら恥ずかしがっても身体はおかまいなしらしい。オズの目に晒された瞬間ぐんっと一回り大きくなるのが見えてしまう。
「へー、結構おっきいね。インキュバスってみんなこんな立派なの?」
「し、知らない……」
実のところ今のギルバートの反応は、オズの下半身も直撃した。下肢に熱が集まる。でもそれを悟られるには少し早すぎる。オズはわざと軽い調子でギルバート自身についての批評を口にした。
見るだけ見るものの、しばらく触れずにいると、ギルバートは居心地悪そうにもぞもぞしはじめる。恥ずかしいのはよくわかる。
「早く触ってほしい?気持ちよくしてほしい?」
「……そんなこと……」
からかうと、そんなこと言えないとぼそぼそ呟く。もっといじめてあげたいけれど、残念なことにオズのほうにもあまり余裕がなくなってしまった。だってこいつかわいすぎるんだもん、と胸の中で言い訳する。
よってオズはようやくさっき思い付いたことを口に出した。
「してほしかったらオレの名前を呼んでねだってごらん。ちゃんと言えたら気持ちよくしてあげる」
触れるか触れないかの柔さでギルバート自身に触れながら、オズは口に出した。ギルバートの顔が更に赤くなるのが見える。明るい場所で見られないのが残念で仕方ない。でも明るい場所でこんなかわいい表情をダイレクトに見てしまったら、もっと我慢ができなくなりそうだ。
「そんな、そんなこと……!」
「ね、呼んでよ。オレの名前、聞いてたでしょ。忘れちゃった?」
先走りが零れる先端をつうっとなぞって促す。
正直なところ、オズもあまり持ちそうになかったから早く言わせてしまいたかった。その気持ちがギルバート自身を緩く刺激するオズの手つきに現れる。
「いやだっ……あ……っ!」
くびれをくすぐり、袋をつつく。脈打ちを感じるように緩く握って軽く、ごく軽く扱く。
最後に唇を近付けてギルバート自身の先端にキスをすると、ようやく掠れた声がオズの耳に届いた。
「オズ……オズ……っ!も、イかせて……」
艶っぽい声で呼ばれてオズの身体の熱が急上昇した。衝動のままにギルバートを強く握り込む。
「ギル、かわいい……すぐにあげるね」
「あっ、あ……やぁっ……」
強く扱きながらもう一度先端にキスをする。堪えきれなさそうにびくんと大きく震えるギルバート自身を口の中に含んだ。そのまま強く吸い上げる。
「ひっ……、あ、オズ、う、あぁぁ……!」
どくっとギルバート自身が大きく脈打ち、オズの口の中に熱い液体が吐き出された。味わう隙がないように即座に嚥下する。液体は粘度が高く、喉に引っ掛かってオズはむせた。
けほけほと咳き込むオズに、ギルバートが手を伸ばしてきた。
「すまな……、口に……」
荒い息で謝られる。ようやく喉の違和感を押し流して、オズは口を拭った。
「いーよ。オレが欲しかったの」
そう言って笑ってみせる。ギルバートが更に顔を赤くしたのが目に入った。


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10.04.19.





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