Dreaming Sunday




腰だけを高く掲げて枕に顔を埋めたギルバートの荒い息が耳に届く。男同士で初めての場合は、後ろからのほうが楽だと聞きかじったことがある。どこでそんな知識を得たのかというのは置いておいて、広くて滑らかな背中にオズはそっと口付けた。
ギルバートの中はとても熱かった。粘膜に直接触れているだけあって、とくんとくんと脈打つ鼓動まで感じられる。
「う、く……、あ……っ」
時折ギルバートの吐息に声が混ざった。それはまだ辛そうなものだ。身体に侵入したオズの指が異物感を与えているのだろう。
(ええと……確かこのへんかな?)
少しでも辛くないように、ゆっくり指を動かしながらオズはギルバートの体内を探った。後ろから指を挿れると、とんでもなく感じる部分があるらしい。そこを探り当てられればきっと大丈夫だ。
柔らかい内壁の感触の中にふと、固さを持つ部分があることに気付く。
(ここか)
くっ、と軽く押すと、途端にギルバートの背中がびくっと跳ねた。
「ああっ……!?や、なに、ひぃっ」
先程までの辛そうな声とは全く違う、甘さを含んだ喘ぎ声が零れてくる。左手をそっと前に回すと、さっきまでくたりとしていたギルバート自身が反応し始めたのもわかった。
にっと笑ってオズはそこを刺激しながら指を増やした。
「ここ、男ならすごーく感じちゃうところなんだって。どう?いい?」
「……んな、わからなっ……ひあっ」
入り口を拡げるように掻き回しながら、こりっとした固さを持つ前立腺も時折引っかいてやる。その度にギルバートの身体は大きく震えて反応を返した。
既にオズの指を三本くわえ込んでもそこはきつそうには見えない。それどころかもっと違うものを、と言いたげにオズの指をきゅうきゅう締め付けてくる。恥ずかしがりらしいが、淫魔らしく快楽には従順だ。下手に攻めるほうに回らないほうがうまく食事ができそうだな、とオズは勝手に考えた。
だけどもう他人には渡さない。『ギル』は自分だけのものだ。
「ギル」
そろそろ大丈夫だろうと、オズはギルバートの中から指を引き抜いた。途端にギルバートの蕾は物欲しそうにひくひくと収縮する。
すぐあげるから、と心の中で呟いて、オズはギルバートの顎を掴むと強引にこちらを向かせた。既にとろけている目で振り向いたギルバートに口付ける。まるで甘いものを食べるようなキスに、ギルバートの上がった息が零れた。
「ねぇ、ギル」
唇を離してオズは囁く。淫魔の本能からか、強く誘うその視線に負けないように見つめ返した。
「おかしいよね、出会ったばっかりなのに、ギルがこんなに好きだよ。オレのものになってくれる?」
「オズ……?なに、言って……」
ギルバートが疑問で返事をする。わからないかな、とオズは内心焦りを感じた。
淫魔にとって身体を重ねることは食事でしかないのなら、こんなことは無意味だ。だけど言わずにはいられない。
「ギルが好きなんだ。だからギルが欲しいよ。あとで返事、ちゃんともらうから」
「え……?あ、待っ……!!!」
既に限界まで張り詰めていた自身をギルバートの入り口に押し当てる。
本当はちゃんと返事をもらってからにするつもりだったけれど、もう待てない。オズはギルバートの腰を掴むとぐっと自分のものを突き入れた。触れたギルバートの背中がびくんとしなる。
「ひっ……ああっ、待って、むり……!」
「ギル、ギル……」
初めてなのだ、もっとギルバートを気遣ってゆっくりするべきなのはわかっていた。だけどオズのほうにも余裕がない。
せめて痛みが拡散するように、ギルバート自身に指を絡めて愛撫する。そうしてギルバートの意識を前からの快楽に向けさせ、だましだまし突き進む。
「あ、う……、いた……」
ようやく全てを収めたときには、ギルバートは涙声になっていた。無理矢理だっただろうか、とオズは少し心配になって、抱きしめた背中に、首筋にいくつもキスをする。苦しそうに震えていた背中が少し落ち着いた頃を見計らって、ゆっくり腰を動かし始めた。
「はぁっ……!あっ、痛、もう、やめ……」
「ごめんな、ギル……もうちょっと我慢して……?」
先程見つけたポイントを刺激すればいいのはわかっている。でもオズも実際に行為に及ぶのは初めて、簡単に見つけることなどできない。
浅く、深く抜き差しを繰り返し、ギルバートの感じるポイントを探す。少しでも痛みから気を散らせるようにギルバート自身を撫でるものの、そこは痛みに竦んでしまっていた。マッサージするように扱きながら内部を探るうちに、ようやく見つけた。
「ああっ……!ひっ、そこ……!」
途端にオズの手の中でギルバート自身が脈打った。
男なら嫌でも強烈な快感を得られるのだ。ぐぐっと一気に勃ち上がる。内部も、オズを受け入れて初めて柔らかく収縮した。
「ここ?もっと感じてよ」
「や、オズっ……そこ、変……やぅっ」
固く勃ち上がったギルバート自身を軽く扱きながら、オズは腰の動きをだんだん速めていった。
ギルバートの中は熱くて強く締め付けてくる。油断していたらオズのほうが先にイかされてしまいそうだ。かわいいギルバートをこの手で抱いているその事実だけでも達してしまえそうなのに、こんなに強く締め付けられたらきっと保たない。オズは夢中になってギルバートの蕾に腰を振る。
「オズ、オズ……あうっ……、も、もう……」
「ギル……!」
加えてギルバートに名前を呼ばれ、オズはたまらなくなってギルバートを再び振り向かせた。しゃぶりつくように唇を重ねる。ギルバートの舌は、熱くて甘かった。
「オズ……す、き……ふっ、ああぁ……!」
「ギルッ……!!」
上り詰める瞬間、ギルバートがうわごとのように口に出した。甘い声と共にギルバートがびくびくと身体を震わせて絶頂に達する。
その言葉が耳を打つと同時に、オズも限界を迎えていた。欲求のままに、ギルバートの奥深くに熱を放つ。
ひくひくと収縮するギルバートの蕾からずるりと自身を引き抜くと、普段一人で欲望を処理するときとは桁違いの気だるさが襲ってきた。
(ああ、そういえば「少し疲れる」って言ってたっけ……)
だるさのままに、オズはどさりとベッドに倒れこんだ。強い眠気も感じる。
「オズ……」
ギルバートの手が額に触れた、と感じたのを最後に、オズの意識は眠りの世界へ引き込まれていった。


「ん……」
ふわふわと覚醒と睡眠の間を漂っていた意識が浮上した。目を開けるとまだ薄暗い。
ぼんやりとした意識の中で、オズは昨夜のことは夢だったのかと思った。寝しなに綺麗な淫魔がやってきて、彼に惹かれたオズは、精気を与えるからと丸めこんで抱いてしまった。全て夢だったのかもしれない。
それに夜も明けるのに淫魔がいるわけが……。
そこまで考えて、オズは背中に感じる温かい感触に気付いた。そちらを向くと、淫魔本人……ギルバートが寄り添っていた。
「オズ」
オズが顔を向けると、ギルバートはほっとしたように顔を綻ばせた。無茶をしたと思ったのに、ギルバートのほうは元気そうだ。
淫魔は眠らないのだろうか。それとも夜に活動する者だから、夜が明けてから眠るのだろうか。
身体を向けようとして、まだ身体がだるいのに気付く。ギルバートが慌てた様子で手を貸してきた。それをいいことにオズはギルバートに抱きつく。
「ギル、お腹いっぱいになった?」
抱きついた身体からは、嗅いだことのない香りがした。身体を重ねていたときはしなかった香りだ。
「ああ。おかげで元気が出た。その……ありがとう」
考えていたのとはちょっと違ったけど、とぼそぼそと付け加えるのがかわいらしかった。
その様子にオズは少し笑って、最中に言った言葉をもう一度口にした。
「ねぇ、ギル。ギルが好きだよ。オレのものになってよ」
「す、好きってそんな……大体オレは」
「人間じゃないし?インキュバスだし?男だし?どれ?」
「どれって……」
多分「全部」と言いたいのだろう。でも言ったらオズを傷付けるから言葉にできない。そんな表情をしている。
「『すき』って言ってくれたじゃん。少しはオレのこと、好きになってくれたんじゃないの?」
「そ、それは前から……っ!」
「……?前から?」
「ちがう、なんでもない!」
前からとはどういう意味か。オズが首をかしげると、ギルバートはぶんぶんと首を振った。
まだ眠気の去らない頭で考えるのは面倒になって、オズは追求するのをやめておいた。
「まぁいいや。『すき』って言ったのが本当なら、次もオレのところに来いよ。他の奴を襲いに行くなんて許さないからな」
「……でも、またオズを疲れさせ……」
どきりとした表情になったギルバートは、何度か眼を瞬かせたあと、そんなことを言う。むっとしたオズは、更に強くギルバートに抱きついた。
「このくらい平気。もう一回寝れば元気になるんだから。大体オレ以外に空腹を満たせた奴なんかいたか?」
「いない……けど」
「じゃあ来い。はい、決定」
煮え切らない口ぶりで、でもそう答えたギルバートにオズは簡単に決定した。
ちゃんと「次」を指示したことで、再び眠気が襲ってきた。ギルバートに抱きついたまま、オズは目を閉じる。
闇の中でしか生きられない生き物のギルバートは、きっと次に目が覚めたときにはいないのだろう。だから今だけでもそばにいてほしい。
「ギル、好きだよ。だいすき」
へたれで、技術もなくて、「NO」も言えないけれど、すごく愛しく思う。
早く思い知ればいい。空腹を満たしてあげられるのがオズだけだということに。
そして離れられなくなればいいのだ。そうしてくれたら、オレはずっと離さない。
眠りにつく前に、呟いた言葉。その返事が「オレも」だったのは……夢でないといい。


END.


*****
ここまでお付き合いくださりありがとうございましたー!ようやく完結です。私のエロは長いですね…お許しくださいませ。
さて、そもそも何故ギルがインキュバスなのか、という点ですが、これを思いついたのは商業BL小説がきっかけでした。その名も『駄目ッ子インキュバス』。タイトルまんまお借りしてしまったのがばればれですが、この本のせいです。この本の表紙がですねー、どう見てもオスカー×ギルだったのですよー!!!(笑)しかも煽り文句が『こんなに下手な口淫は初めてだ』でして…駄目っ子でへたくそな淫魔ギル!?超萌え!というわけで…わけで…オズギルに変換してしまったのでした…。
夜這いをかけるのも、ちゅーも、口淫も(笑)、なにをやってもダメダメなギルはすごくかわいい!うまく表現できていればいいのですが…。
ところで続編は今のところ全く未定です。でも自分で書いていても「これって続くの?」という感じですね。ギルがなんだか思わせぶり…。気が向いたらまた書くかもしれません。とりあえず次はギルオズ!メイド!(笑)次回も頑張ります。


10.05.06.





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