Dreaming Sunday

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※直接的表現はありませんが、ちょっとあやしげな雰囲気があります。
苦手な方はご注意ください。











それは月も凍るような、寒い夜。


あなたへの月




「……?」
自分以外に誰もいないはずの部屋の中、気配を感じてギルバートはベッドから起き上がった。サイドテーブルに置いてある愛用の銃を音をたてないように引き寄せる。鍵はかけた、そんな部屋に入ってくるなど穏やかでない人物に決まっている。
十分注意を払いながらそっとベッドから下り……ランプをつけて、ギルバートは脱力した。暗い中で部屋の様子が見えなかったからだろう、壁づたいにそろそろと歩いてくるその人物は、彼の主人であったから。
「……こんばんは」
「……オズ……なにをしている。鍵はかけたはずなんだが」
「合鍵。作っちゃった」
「作っちゃった、って、お前……」
流石に少し言いづらそうに、それでも堂々と「こんばんは」などと言ってのける主人……オズに、ギルバートは盛大にため息をついた。銃の安全装置を戻してサイドテーブルに置く。合鍵をどうやって、いつのまに作ったかなどとは聞かない。あまり知りたくないし。
「で、どうしたんだ。なにか用事か?」
「うん、ちょっと寒いなーって」
不法侵入にも怒ることのできない自分をギルバートは少々情けなく感じながらも質問をした。勝手に合鍵まで作るのはどうかと思うが、オズがこうして部屋に訪ねてきてくれたのは嬉しかったから。
しかし見ればオズときたらパジャマの上にローブ一枚しか羽織っていない。そんな格好でいれば寒いに決まっている。
「そんな格好だったら寒いに決まっているだろう……もう一枚毛布を用意するから。早く部屋に戻れ」
夜勤のメイドに頼めばすぐに手に入るものをわざわざ寒い中自分の部屋までこなくても、と考えるギルバートはやはり相当にぶいのだった。当然のごとくオズは膨れる。
「ギルのバカ。もういい、勝手にする」
「は……!?な、なにをする!」
ギルバートを睨み付けるとオズはつかつかとベッドに歩み寄り……靴とローブを脱ぎ捨てるとさっさとその中に入ってしまった。ギルバートは目が点になる。
「あー、あったかー……ほら、早くおいでよ」
満足げにぬくぬくと布団にくるまるオズ。確かに先程までギルバートが潜っていたのだから、体温が残って暖かいのだろう。
オズが自分のベッドにいる。そのことに体が燃えるように熱くなるのを感じた。
そしてギルバートは気付く。今、なにかすごいことを言われなかったか。
「その、オズ……まさかとは思うが……」
「うん、ここで寝る。だからさっさと来い」
「来い、って……」
一緒のベッドで眠るなどとんでもない。オズの要望がわかってもなお躊躇っていたギルバートだったが、「いいから早く」と半ば無理やりベッドに引きずり込まれたのだった。

「絶対あったかいと思ったんだー。こうしてると懐かしいよね、ギル」
無理やり引きずり込んだギルバートの腕をちゃっかり枕にしたオズが嬉しそうに話すけれど、ギルバートはそれどころではなかった。確かに懐かしくはある。しかし、今はこんなに年齢差がついてしまって、しかも……一応恋人同士になったのだ。こんな状況なのに、オズは緊張しないのだろうか。
ちらっと見ると目が合い、オズはにこっと笑ってくる。その表情はギルバートの鼓動をますます早くした。
「変なやつだな。あ、もしかして」
ぴったりくっついているのだ、鼓動も筒抜けだろう。オズは呆れたような顔をしたあとで、いじめっこのあの顔でにやっと笑った。
「なんか、期待した?」
「なっ……し、してない!なにも!!」
「嘘つきー」
心底嬉しそうにくすくす笑うオズに恥ずかしくなって背中を向けたくなるけれど、腕を使われているためにそれもかなわない。
「ねぇ、」
ぎゅっと、オズがギルバートのシャツを掴んで身を乗り出してきた。唇が触れるほど近付かれてギルバートの心臓は止まってしまいそうなほど早く打つ。それでもオズの眼から視線をそらすことができなかった。何故かとても妖艶に見えるその瞳に吸い込まれてしまいそう。
「してもいいけど?そういうこと」
「オ、ズ……?」
オズはギルバートの胸の上に乗り掛かるとそっと唇をなぞってきた。ギルバートはされるがままになるしかない。体が麻痺したように動かすことができなかった。
オズの唇が何事かを言う形に動き……しかしそれはギルバートの耳に入る前にかき消されてしまう。
「……なんてね。冗談冗談。寝よ?」
ふっといつもの眼に戻ると、オズはギルバートの体の上から身を引いて、先程と同じように隣にころんと横になった。強引にギルバートの腕を占領して目を閉じる。しかしギルバートにしてみれば、はいわかりましたと眠りにつけるわけがなかった。
「……オズ」
小さな声で呼んでみても、オズは寝る気になってしまったのか返事をしない。少しの心残りを感じながらも、ギルバートはようやく詰めていた息を吐いた。
どくどくと高鳴っていた胸もようやく少しだけだが落ち着いてくる。あのままどうにかなっていたら、緊張と胸一杯に広がる切ない気持ちで破裂してしまったかもしれない。それほどまでにギルバートは追い詰められたのだ。いい歳の男が情けない、とは思うけれど、だってオズのことが好きなのだから仕方ない、と内心で言い訳する。
冗談、なんてオズのほうこそ嘘つきだ。オズは戯れでそんなことをしない。
あのとき感じたのは、オズからのまだ発酵しきっていない求める気持ち。オズの中でもまだ未成熟なのだろう、だから『冗談』などと打ち切ってしまったはずだ。完成されていたら、オズはなにがなんでも実行してみせるだろう。
今はそうならなくて良かったと思う。オズのことが好きで、欲しい気持ちもあるけれど、やはりギルバートの気持ちもまだ完成されてはいなかったから。いつか、躊躇わずに心からオズのことを想えるようになったら、きっとそのときは。
「……おやすみ」
今夜はきっと眠れない。大好きなオズがこんなに近くにいて眠る余裕なんてない。でも、それでも一緒にいたいと思う。
オズの髪をすきながら呟くと、ギルバートの腕の中でオズが身じろいだ。オズも今夜は眠れないのかもしれない。
先にはまだ進めないし、無理をして進むこともないけれど。それでも今夜は二人で暖かく寄り添っていたかった。


END.


*****
お久しぶりの更新になってしまって申し訳ないです!冬の話といえば添い寝だろー!エロいのが書きたい!と書き始めたものの……そこまで至りませんでした……orzやっぱり我が家の二人はまだそこまで行き着かないようで……自分でももどかしくてなりません!
ところでこの話はオズギルなのか?ギルオズなのか?解釈はご自由にどうぞですv


10.02.09.




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