Dreaming Sunday

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只一つ隠す金色

予定は把握した。
今日一日ギルバートは違法契約者の調査の仕事で外出。そして昨日は『突然押し付けられた』仕事が片付かなくて、アパートに帰ることなくパンドラ内に用意された自室に泊まった。
オーケー、全て計画通りだ。
「……」
今は無人、ギルバートの部屋の前に立つのはオズ。何故こんなに綿密に計画を立てて、留守に忍び込もうとしているのか。意味もなくそんなことをするわけがない、今日は重要な、しかし秘密裏に行わなければいけない理由があった。
鍵を差し込むと、カチンと小さな音がして扉は簡単に開いた。それも当然、この鍵は部屋の持ち主本人から引ったくったものだ。ギルバートが出かける直前、一番ばたばたしている時間に「あっ、昨日ギルの部屋に忘れ物しちゃった!鍵貸して!」と無理矢理ではあるが、合法的に奪い取った。
鍵はオズの手にある、それならばこそこそする必要はないと思われるかもしれない。しかしことは誰にも知られないよう、素早く終わらせる必要があった。というのも。
「……よし、まだ来てないな」
こそこそと、しかしドアを閉めてしまえば堂々と、オズはギルバートの私室に侵入した。
目的のものは一つ。それはテーブルセットの上、小さな皿にいくつか入っていた。灰のついたそれを丁寧に払って一つ失敬する。これで任務は完了だ。
「悪いけど、もらうからね」
それは煙草の吸い殻。愛煙家のギルバート、煙草を吸ったあとには当然吸い殻が残る。
そのことに気付いてからはひそかに狙っていたのだけど、なかなか手に入れる機会がなかった。外で吸ったときはそのまま捨ててしまうし、あとからそれを拾いに戻っても、果たしてそれがギルバートのものかという確証などない。パンドラ内やアパート、レインズワース家の屋敷にいるときは当然灰皿を使う……ものの、人前で灰皿を漁るわけにはいかないし、アパートでは自分で掃除をするギルバートに本数が足りないことに気付かれる危険があった。
なのでパンドラ内の私室に泊まるように仕向け、ギルバートが出掛け、かつ掃除のメイドが来る前に侵入したという次第。
計画は完璧だった。今日ばかりは仕事時間より早く来ることのないメイドに感謝だ。
「ギル」
失敬した煙草の吸い殻。それにそっと唇をつけた。
本人に黙ってこんなことをするのはルール違反なのかもしれない。でも、どうしても欲しかった。
ギルバート本人にねだれば「こんなもの、あげるようなものじゃない」と言いながらも最終的にはくれるに違いない。
だけどこんなこと、頼めるものか。煙草の吸い殻が欲しいなんて、そんな執着心を知られてはたまらない。
だからこんな手段に出た。ずるいのはわかっているから誰にも秘密で。
自分だけの秘密のそれを、用意してきた小さな金属のケースに入れて、ぱちんと蓋を閉めた。


END.


*****
私は煙草を吸わないのでわからないのですが、「大好きなあの人の吸殻をこっそり失敬しちゃった☆」という展開は漫画やドラマなどで(特に少女漫画っぽいもの)よく見るのでポピュラーなことなんだなぁと思っていました。なのでオズがこっそりギルの吸殻を持っていたらかわいいだろうなぁ…と思ったのです。
しかし、煙草を吸う知人にこの妄想を話したところ「いや、それはストーカーだから」と言われて戸惑いました。かわいい行動なのか!?それともストーカーなのか!?どっちなの!?一生煙草を吸うつもりがない私にはわからない!
そんなわけで結局こんな仕上がりになりました。可愛いにしろストーカーにしろ、オズは絶対こっそりやります。ギルにそんな弱点を晒すようなオズ様ではない(←何故か様付けに…)。

ちなみに「ストーカー」と評されたのが衝撃的で、仮タイトルは『ギルの煙草にストーカー』でした…(酷い)。流石にこのタイトルは駄目だ…と変えましたが、『ギルの煙草にストーカー』のままだったら随分印象が変わっていたかもしれませんね!


10.03.25.




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