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Too sweet chocolate

※CPではありませんが、ブレイク×ギルバートの描写有。ご注意ください。




手渡し、人づてに、或いは机に、自室の前に。今までいろんなかたちでチョコレートを受け取ってきたが、これほど度肝を抜かれる渡され方をしたのは初めてだった。
「……っ馬鹿野郎!!」
罵声と共に思いっきり顔面に綺麗な包みを投げつけられて。
それを避けられなかったのは、あまりに驚きが大きかったから。肩で息をしながらこちらを睨み付けるエリオットがチョコレートをくれるなんて、思いもしなかったから。

思いもしなかったのだ。沢山の人にチョコレートをもらってはいても、まさかエリオットからもらえるなんて、欠片も思わなかった。身体の関係を持っていても、エリオットとは恋人同士などといった甘い関係ではないし、ギルバートを相手にした互いを利用しあう都合のいい関係ですらなかった。
そのほうがまだ救いがあったかもしれない。ギルバートは当然のように手作りであろう包みを寄越してきたし、それになんの気持ちも(もしかしたら慈愛くらいはあるかもしれないが)込もっていないことなんてもうお互いよくわかっていたから。
ブレイクが気の向いたときに呼び出し、弄ぶ。悲しげな眼をしながらもエリオットがそれを拒むことは決してなかったし、それはつまり、エリオットの気持ちにつけこんだ一方的な関係に他ならない。好意が全くないとは言わないが、エリオットの気持ちに応える気が全くない以上、やはり一方的でブレイクだけにとって都合のいい関係ということになるのだろう。
ブレイクへの好意が筒抜けのエリオットだが、一応本人に隠す気はあるらしい。硬い殻をかぶったように「お前なんか最低だ、好きなはずない」と言うのはもう何度も聞いているし、所謂ツンデレというタイプだ。
だからバレンタインディとはいってもチョコレートなぞを寄越すタイプではないだろうと思っていたのだ。そう踏んで、少しからかってやろうとエリオットの私室に忍び込み(今日は同室の従者は留守らしい)、バレンタインディの話題を振ってみた。「甘いもの大好きなの、知ってるデショウ?さぞかしおいしいチョコレートをくれると思ったんですけどネェ」などと勝手なことを言っていたら食らったのが先ほどのものだ。
軽くて少し硬い箱を顔面で受けとめてしまい、ブレイクは怒りを覚えるよりも唖然としてしまった。かたんと床に落ちた箱を見るより先に、エリオットを見つめてしまう。顔を赤くしながらも、ブレイクを睨み付ける目から目が離せなかった。
「勝手なことばっかり言いやがって……誰がやらないなんて言った、バーカバーカ!」
その悪態も、鋭い眼差しも、本人は敵意を剥き出しにしているつもりなのだろうが、ブレイクにはかわいらしいものにしか映らなかった。そしてそれを実感した途端、自分自身にぎくりとした。
これはまずい。とても、まずい。
「どうせ菓子が欲しかったんだろ!ただ菓子をやるだけなんだからな、さっさと食え」
足元の箱を拾うべきか拾わないべきか、少しだけ悩んだ。予想だにしていなかったそれに気持ちがこもっているのは明らか。こんなものを受け取ってはいけない気がする。それこそエリオットに余計な期待を持たせてしまうだろう。しかし催促したのは自分だ。
数秒悩んで、ブレイクは箱を取り上げた。小さな箱は間違いなく手作りではない。とはいえ市場に売っているものではなく、店から取り寄せた、もしくは抱えているパティシエに作らせたであろうもののはずだが。
深い青をしたリボンをほどく。エリオットがほっとしたような顔をした。それを気にとめることなく無造作に指をかけ、包みを開く。
中に入っていたのは見目よく詰められたトリュフ。綺麗に箱の中に並んでいた。ギルバートほどではないにしろ、エリオットも多少はブレイクの好みを知っているはずだ。その証拠にそのトリュフはとてもおいしそう。
適当に選んだ一粒をつまむ。口に入れると、残りをエリオットに押し返した。エリオットが目を丸くして箱を手で支える。
口にしたトリュフはまさにとろける甘さ。甘いそれを飲み込み、ブレイクは全く甘くない言葉を口にする。
「ありがとうございマス。もう十分デス」
「……は」
エリオットの表情が歪む。一つ分だけあいたその箱に一瞬だけ視線を落とし、すぐにブレイクを見た。その眼と視線をあわせることなくブレイクはキャビネットに手をかけた。予定は変更、ここにいる意味はもうない。
「では私は帰りマス」
「……っ、なんだよ、わけわかんねぇ!こんな、中途半端な、……」
エリオットの声が悲痛さを帯びるけれど、聞きたくない。ブレイクはそれを無視してキャビネットの中に滑り込んだ。
「……馬鹿野郎……」
扉を閉める直前、最後に聞こえたのは悪態。なのにとても悲しそうな色を帯びていた。
部屋から退散して、ブレイクは一つ舌打ちをする。またしても読み間違えた。自分に自己嫌悪を覚える。いつもこうだ、ギルバートに対してならばどう扱えばどう反応するかを外すことはないのに、エリオットにはそれがことごとく通用しない。ああ、やっぱりとっても面倒くさい。
早く帰ってギルバートからのチョコレートを食べたい。そっちのほうがきっとおいしく気軽に食べられる。
それなのに、エリオットから受け取った、たった一粒のチョコレート。たった一粒しか食べなかったそれが、いつまでも甘味を引いて消えてくれない。甘味の意味も、一粒だけ食べてしまった意味も、考えたくはなかった。
エリオットの気持ちを受け取る気なんてない。だから意味なんて考えてはいけない。それはきっと赦されない。
ポケットに手を突っ込み、飴を取り出す。飴を口に詰め、無理やり苺の味で口内を満たす。知ってしまった甘い味を、こんなもので消せるはずはないと、知ってはいても。


END.


+++++
あああ、本当に甘くない…エリーごめんね…!ブレイクさんはエリーに落ちかけていますが未だにブレ←エリな感じです。
遅くなりましたがバレンタイン更新でした!


2011.02.16.



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