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恋の天使は青い羽

(……ああ、今日は……)
なんだかやたら街の中が騒がしいなと思っていたら、今日は聖ブリジットデイだということに思い当たった。
街の中は青い服を着た女の子達で溢れ返っている。その中に天使も混じっているのだろうか。そう考えて、ギルバートは苦笑した。天使、なんて考えるのは自分の柄ではないだろう。
しかし路面の店、その中の一つで青い羽の髪飾りを見付けたときばかりは一瞬足を止めてしまった。
祭りの最後に男性から女性へ贈る、髪飾り。その羽に込めた想いというのは……。
(なにを、バカなことを)
オズのことを考えてしまった自分を叱咤する。オズは女の子ではない、こんなものをあげても迷惑なだけに決まっている。
「お兄さん、一つどう?迷ってるなら告白の理由になるよ」
「いや、オレは……」
告白もなにも、一応恋人同士だし、と思って一人恥ずかしくなる。オズに髪飾りを贈ろうとなど一瞬でも考えてしまったことに罪悪感を覚えた。オズを女の子扱いしたいわけではないのに。
「悪いが今回はやめておく」
「そう?ま、店は夜まで出してるからさ。気ぃ変わったらいつでも来てくんな」
「ああ、ありがとう」
どうにもおかしなことを考えてしまったものだ、と頭を一つ振り、ギルバートは本来の目的地である実家…ナイトレイ家への道を再び歩き出した。


青い羽の髪飾りはともかく、食事くらいは祭りにちなんだものにしてもいいだろう。今日はオズがアパートに来る予定だ。なにかおいしいものを、とあれこれ材料を買い込み帰ってきて、キッチンで奮闘していると玄関のベルが鳴った。
「ギル、来ちゃった」
「ああ、よく来たな。もうすぐできるから早く入るといい。寒かっただろう」
オズを部屋に招き入れてコートを脱がせる。それをハンガーにかけて……と動いていると、オズが楽しそうに笑った。
「なーんかギルってさ、お母さんみたいだね」
「はぁっ!?」
「だってエプロンしてご飯作ってるし。脱いだコートはちゃんとかけておけよ、ってことだろ?」
「そりゃ……そうだが」
ギルバートが不満げな顔をしたのが気に入らなかったのか、オズは少しだけ膨れた顔を見せた。しかしそのあとににやっと悪戯っ子のような顔で笑う。
「『お母さん』より『奥さん』が良かった?」
「は……はぁ!?」
言われた言葉は予想外のものだった。そりゃあ確かにオズのためにエプロンをして食事を作って……そんな行動は夫婦、それも妻のほうに当てはまるのかもしれないけれど。
「ふふ。かわいいなぁ、オレのお嫁さんは」
「だっ、誰がだっ……」
「違うの?」
「違うっ!そりゃ、違わないけど違う!」
「まぁまぁ、いいじゃん、どっちでも。それよりギル」
オズの恋人であることには違いないけれど、妻役というのは勘弁してほしい。力説したのだが、オズはあっさりとギルバートの言葉を流して話題を変えた。
「ちょっとかがんでくんない?」
「……?なにを……」
「いいから。ほら早く」
オズがそんな要求をしてくるときは、大抵キスをしたいときだ。
どうしてもギルバートのほうが身長があるものだから、椅子にでも座っていない限りはオズのほうが下の位置にいる。素直に従わなければタイを掴んで無理矢理下を向かされる。それは首が痛いし、今は拒否する理由もなかった。
よっておとなしく従ったギルバートだったが…オズの行動は予想と違うものだった。
「……これは」
「えへへ、プレゼントだよ〜。ご飯作ってくれたお礼に、ね」
料理をするために髪を後ろでくくっていたギルバート。その結び目になにかをつけられた。この日に髪につけられるものなど一つしかない。
「……オズ……」
「うん、かわいいよ、ギル。絶対似合うなって思ったんだ。お前、青が似合うよな」
そっと手で触れる。陶器製だろうか、冷たい感触の羽、それに石が飾られている。まさか自分が贈られる立場になるとは思わなかったが、嬉しいと、素直にそう思った。
「なんか今日はそれを贈る日らしいじゃん。だから、さ」
「……ありがとう、オズ」
自然に笑顔が浮かんできてお礼を言うと、オズも満足げににこっと笑った。ギルバートはその反応に思い当たる。
この聖ブリジットデイの『羽の髪飾りを贈る』習慣ができたのはここ数年のことだ。もしかしたらオズは今日それを知ったのかもしれない。
オズに髪飾りをもらって嬉しかったけれど、それだけではいけないのではないか。オズは『想う相手に髪飾りを贈る』ということをしてくれたのに、こちらからなにもなしというわけにはいかない。やっぱりあのとき買っていれば良かったのだ。まだ間に合うだろうか。いや、急げばきっと。
「オズ、すまない、買い忘れを思い出した。すぐ戻る」
「……?そうなの?」
なにがなんでもオズに髪飾りを贈りたい。そう考えたギルバートはハンガーにかけておいた自分のコートを掴むと腕を通した。急げば10分程度で帰ってこられるだろう。
「本当にすぐ戻るから!待っていてくれ」
「わかった。あ、ギル」
「なに……!」
帽子をかぶり、玄関へ向かおうとすると、オズにぐっと腕を引っ張られた。バランスを崩したその瞬間、頬にオズの唇が寄せられる。
危うく転びそうになったのを踏みとどまり、オズを見つめ返す。オズは嬉しそうににこにこしていた。
「早く帰れよ。帰ってきたらちゃんとしてやる」
「……っ、行ってくる!」
顔が熱い。きっと赤くなってしまっている。そんなところを見せたくなくて、帽子を深くかぶると玄関を抜けた。気持ちを落ち着けるために一つ息をつくと、ギルバートは昼間通りかかった店へと走り出した。
オズがくれたように、自分もちゃんとオズのことを想っていると伝えたい。髪につけなくてもかまわない、気持ちが伝わればそれでいい。
店へ急ぐギルバートの帽子の少し下。結んだしっぽの根元で青い羽が美しく光っていた。


END.


*****
メリークリスマス!今日はクリスマスイブですね!クリスマス更新です。
しかし、パンドラの世界にクリスマスはあるのか?と考えたのですが、どうもなさそうだという結論に達したので、代わりに聖ブリジットデイの話にしてみました。現実世界が真冬なので冬のイメージで書きましたが…聖ブリジットデイが冬のお祭りだという確信はないです…むしろ薄着だし花火上がってるし花びら舞ってるし、春なのかも…。まぁそのあたりは二次創作の醍醐味ということで!
そもそもこの二人、原作だとこの日喧嘩するんですけどね!原作どおりの展開だと二人とも仲良くご飯を食べる状況ではないのですけど…、それは二次創作の(以下略)
青い羽の髪飾りですが、ギルがヴィンスに「主人に羽を贈ってあげなきゃ」とか言われてましたが、絶対ギルのほうが似合うと思います!ギルは青のイメージですから!あの髪飾りをつけたら絶対かわいいですよね!
なにはともあれ、メリークリスマス!今夜はオズとギルがいちゃいちゃ過ごしますように!


09.12.24.



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